悪魔崇拝者たちの夕べ

世間が浮かれているなか、明日のサバトの準備をすることにした。


まずは鳥の死骸に、生贄にするための下ごしらえをする。もちろん首を切り落とし、はらわたを掻きだしたものをだ。
神を呪う言葉をつぶやきながら、はらわたが入っていたところに塩を塗りこみ、牛の乳から作った油を使って火を通した米や野菜をつめこむ。
あとは鳥の死骸から脂が噴き出すほど長時間火にかけるだけだ。
サバトには精神を高揚させるための薬物も欠かせない。
今回は麦を発酵させて作ったぼこぼこと泡立つ液体や、果実を皮ごとすり潰して発酵させた静脈血のような色の液体を用意する。
これらを服用すると理性が低下し、気分が高揚する。大声で支離滅裂なことを喚いたりするものもいる。人によっては、嘔吐、意識の消失、一時的な記憶障害を起こすこともある。短時間に大量摂取すると中毒症状を引き起こす場合があり、死に至ることさえある。取り扱いには注意が必要だ。
日本ではこの類の薬物を許可のない者が製造・販売を行うと犯罪になる。我々の身の安全のため、今回は許可を持つ業者に金を渡してこっそり受け取った。
おっと、神を呪う言葉とともに破裂させる、円錐形の紙の筒に火薬をしこんだものも忘れてはいけない。

サバトの準備がつつがなく終了したころ、就寝することにする。


しかし、我々のサバトなどは児戯に等しい
真の悪魔崇拝者たちは、神の子を自称する呪われるべきあの男が生まれたというこの日に、七つの大罪を一通り執り行うのだから。

  • あの娘は何をもらっただのどこへ連れて行ってもらうだのという嫉妬(Envy)
  • クリスマスイブなのだからどこかへ連れて行って当然だという傲慢(Pride)
  • クリスマスイブだからといってろくに仕事に身が入らない怠惰(Sloth)
  • 約束の刻限に遅れたのなんのという憤怒(Wrath)
  • ここぞとばかりの暴飲、暴食(Gluttony)
  • さらなる奉仕や物品の供出を要求する貪欲(Greed)
  • 婚前交渉という許されざる姦淫をなす色欲(Lust)


日本列島各地にて悪魔崇拝者たちが黒ミサを行うこの夜を、あなたも存分に退廃と享楽とともに過ごさんことを祈って。