iPod Photo(前編)

さてさて。プロの企画職であるid:anrakusai氏にケチョンケチョンにされてしまったiPod Photoであるが、ちょっと弁護してみよう。

iPod単体をハードウェアとして見ると、実はこれはとんでもない片手落ちデバイスだ。

本体のインターフェイスは実にシンプルである。ホールドスイッチ、ホイール、ボタン5つ(進む、戻る、再生/一時停止、メニュー、決定の5つ)しかインターフェイスがない。(1000曲保存しようが快適に聴きたい曲を探す事ができるにも関わらず、インターフェイスがシンプルであることは特筆すべきことだ)

では何が片手落ちか。
再生専用ポータブルMDプレイヤーですら、誰かにMDのメディア借りればなんとか聴く事ができる。
ところが、iPodは本体だけあっても何もできない。音楽を聴こうにも曲を保存することすらできない。

iPodに曲を保存するには、PCとiTunesが必要である。
つまり、iPodは、本体とPCとiTunesがあって初めてその機能を発揮できるのだ。
この点において、iTunesインターフェイスを抜きにiPodを語る事はできない。
なぜならば、iPodはおそらくその設計思想において、本体の機能を極力iTunes側に委譲することによって、本体側をシンプルにしていると考えられるからである。iTunesという第二のインターフェイスあってのiPodなのだ。


そして、このiTunesが、この上なく強力なのである。
数千曲の楽曲を管理することを念頭においてデザインされている。
僕の知る限り、このオーダーの曲数を想定しているメディアプレイヤーはiTunes以外にない。
まず、CDをインポートした時点で、自動的にCDDBより曲のメタデータを取得し、曲のジャンル、アルバム名、アーティスト名などを保存してくれる。
そして、これらの要素により自由に表示の絞りこみを行う事ができるので、何千曲あろうが、わずか3クリックで、望みの曲が画面に表示される。あとはダブルクリックすればそれを聴ける。
さらに、ビットレート、サンプリングレート、曲の長さ、自分で付けた点数、再生回数、登録日付、最後に聴いた日付など20程の項目を好きなように指定して、簡単にプレイリストを作成できる。(例えば、ジャンルはクラシックでドヴォルザーク作曲の曲リストとか、最近登録した曲で再生回数が多い順に30曲など)
きわめ付けは、再生リストを含め、これらをそのままiPodに保存できる。CD1枚分の転送にかかる時間はおよそ1分。早!


僕はものぐさなので、MDの曲名をあの腐ったインターフェイスで入力するのが苦痛で仕方なかったのだが、iTunesは勝手に取得してくれる。もし、曲名を変更したいとしても普通にキーボードで入力できる。素晴らしい!


iPodの素晴らしさの50%はiTunesの素晴らしさである。
膨大な数の曲を快適に管理でき、それを瞬時にiPodに反映することができる。
ハードウェアが持ち運ぶ曲数という壁を打破した。
同時に、持ち運ぶ曲数が増えた時に必然的に発生する操作の複雑さをソフトウェアがカバーした。

ハードとソフトがここまで高度にインテグレーションされ、相互補完しあっているプロダクトをみて、僕は鱗が落ちる思いだった。
いちソフトウェアエンジニアとして、尊敬の念を抱かざるを得ない。
iPodより安くて高性能なHDプレイヤーはある。だが、そのハードに付属するソフトは、iTunesよりも使いやすいだろうか?
食わず嫌いはよくないとは思うが、おそらく否だ。

この前提を押えておかないと、iPod Photoについて語る事はできないと思う。とはいえ、長くなってしまったので、本題は次回に譲ることとしよう。