曙はプロレスラーになったが、JerryとDavidは世界で最も裕福な30代の一人になった


梅田さんの講演のログを読んで「次の10年」について考えさせられた。


10年ほど前、Jerry YangとDavid Filoという相撲ファンの大学院生が、konishiki(小錦)、akebono(曙)と名づけた2台のサーバ上にインターネット上のWebサイトを分類するサイトを作った。彼らは自分たちのサイトを"ならず者"と名づけた。

10年たって、小錦はタレントに、曙はプロレスラーになったが、JerryとDavidは世界で最も裕福な30代の一人になった*1


10年である。10年はこれほどに長い。1995年にリリースされた最初のWindows95についていたInternetExplorer1.0はおもちゃのような出来だった。僕はNetScape3.0をダウンロードするためにこれを使って以来、一度も触らなかった。10年後にはNetScapeはもうないよ、と教えたら僕は信じただろうか?

そして1998年。Windows98がリリースされた年としてではなく、Googleが創業した年として、この年は世界史に記憶されるだろう。ここ10年後のテストにでるからよく覚えとくように。


次の10年に何がおきるか。正直僕には想像もつかない。タイムマシンに乗って10年後の僕があらわれて、いや実は10年後にはGoogleはもうないんだよ、と言われてたとしても信じることにする(にわかには信じられないが)。
梅田望夫さんは、「理解しあうことのない『二つの別世界』」が生まれる可能性を感じているのだという*2。インターネット上で何が起きているのか見ている人と見ない人。前者の代表として「若い人」、後者の代表として「フォーサイト読者層のようなエスタブリッシュメント」とおっしゃっている(本当は年齢は関係ないのだろうけれど)。


その分裂は何を生むのだろうか?
エスタブリッシュメント層てのにあまりお目にかかったことがないのでよく分からないのだけれど、おそらく彼らは賢く、数字を正確に読み取れるのだろう。彼らがインターネットを外から見たら、こんな感じか?

  • インターネット業界はほとんど広告収入である
  • 手数料収入や有料会員収入は金額的には微々たる物
  • 物販(EC)は「ロングテール」が面白いものの基本的に薄利多売
  • インフラ系はすでにコモディティ化している

この辺りの資料を見れば

  • 広告収入はかなりの勢いで成長している
  • ただし全体のパイを広げるというよりは新聞、雑誌、ラジオ辺りのパイを食って成長している
  • 10年以内に広告媒体として新聞のシェアを抜く可能性がある

数字だけ見るとおそらくこんな分析になるんじゃないだろうか。しかしこれだけでは、Google時価総額は説明できまい。ここでとどまるならば、おそらくマーケットを読み間違える。エスタブリッシュメントのこれまでの成功体験のようには、これからのマーケットは動かないのではないか。
上記の分析は単に、この10年でインターネット上に確立できたビジネスモデルがほぼ広告のみであることをいっているだけである。インターネットの価値は、不特定多数の人々が直に発信し、受信する情報の津波そのものの価値だ。Googleの価値は砂利の中から一粒の砂金を見つけ出してくれることだ。情報の津波はマーケットをすっかり変えるだろう。
例えば、チープ起業なんていうのは、金貸し(ベンチャーキャピタル)をすらコモディティ化する可能性を秘めている。GREE、sidefeed、fenrirなど、サラリーマンが趣味で作っていたサービスで起業してしまう時代なのだ。誰でも安価に情報を発信できる基盤は、間違いなく世の中の仕組みを大きく変える。

これからの話をアナロジーで考えると間違えます
丸ごと、そういうもんかと受け入れて

肝に銘じよう。次の10年もその次の10年も走っていくために。

*1:このお話は日本語で読むこともできる。

*2:次の10年で、とはおっしゃっていないが、間違いなく次の10年で顕在化するでしょう